トレーニングの本質を探し求めて
サーフィントレーナー 及川 信幸さん
サーフィンのトレーナーとして、第一線で活躍中の及川信幸さん。
日本代表選手も指導するなど、その実力は豊富な実績が証明しています。
そんな及川さんが「自分のものにしたい」と取り入れているのが、ウイニングボールのパワーライントレーニング。
さまざまな理論を探求する中で感じた、パワーライントレーニングの強さとは。そして、その先に見えてくる「本質」とは。
指導者としての視点から見たパワーライントレーニングの魅力を語っていただきました。
01. サーフィンを指導する環境は整っておらず、指導者そのものがめずらしい存在なんです
聞き手
本日はよろしくお願いします。まずは、簡単に自己紹介からお願いできますでしょうか。
及川さん(以下及川)
はい。現在はトレーニング施設を運営しており、サーフィンの選手の指導を中心とした活動をしています。競技としてレベルアップを目指す人もいれば、レジャー・趣味として上手になりたいという人もいます。直接、指導しているのは40?50人ほどでしょうか。
僕自身も大学時代までは選手として活動していました。現役のころから、将来の道として指導者という選択肢は頭にあり、それを今は実現させているという状況です。
僕自身も大学時代までは選手として活動していました。現役のころから、将来の道として指導者という選択肢は頭にあり、それを今は実現させているという状況です。
聞き手
ウイニングボールの松尾代表とはどのようなきっかけで出会われたのですか?
及川
たまたま、知人からの紹介で…色々とトレーニングについて模索していたところだったので、松尾さんの話を聞いているうちに、身体やトレーニングに対する考え方が同じだと感じるようになりました。それで、僕が指導していた生徒の指導を松尾さんにお願いしたところ、パフォーマンスが上がっただけでなく、僕の指導もうまく吸収できるようになって、ますます効果を実感しました。
聞き手
2016年に開講された「パワーライントレーナーC級インストラクター」の講座も受講されたと聞いています
及川
そうです。実は以前から個人的に松尾さんから継続してレッスンを受けているのですが、資格制度ができたと聞いて改めて学ぼうと思い、受講することにしました。
聞き手
それだけ及川さんが惚れ込むパワーライントレーニングのことは後ほどじっくりうかがうとして、現在のサーフィンの指導者を取り巻く環境とはどういったものなのでしょうか?
及川
サーフィンの指導者は、まず絶対数が少ないです。例えば、ゴルフであれば競技人口が多く、トップアマも多いので教えてもらえる機会も豊富にあります。また、いわゆる「打ちっぱなし」のような練習施設でティーチングプロに教わるなど、環境も整っています。でも、サーフィンの場合は指導できる人が少ないので、うまくなれるシステムが充分ではありません。なので、一人でも多くの方にレベルアップしてもらいたいと考えています。
「サーフィンの指導」といえば、サーフショップでサーフボードを買えば、そこで教えてもらうのが当たり前という世界です。サーフィンの指導を専門的に行う職というのはめずらしいもので、ビジネスとして成立させるまでの道のりは大変でしたね。低迷している選手のパフォーマンスを取り戻させたり、日本代表に選ばれるような選手を指導したりするなど、結果を出すことで徐々に認められるようになりました。
「サーフィンの指導」といえば、サーフショップでサーフボードを買えば、そこで教えてもらうのが当たり前という世界です。サーフィンの指導を専門的に行う職というのはめずらしいもので、ビジネスとして成立させるまでの道のりは大変でしたね。低迷している選手のパフォーマンスを取り戻させたり、日本代表に選ばれるような選手を指導したりするなど、結果を出すことで徐々に認められるようになりました。
02. 身体の使い方に関する考え方が、初めて一致した人
聞き手
指導者としての道を歩み始める上で大変だったのはどんなところでしたか?
及川
指導を始めた当時、よく言われていたんです。「及川のトレーニングは、従来の日本にある考え方とは真逆の存在だ」って。僕自身はプロのサーファーではないし、サーフィン自体がむちゃくちゃ上手なわけでもない。当然、プロのサーファーの指導のほうが説得力もあるし、それと真逆のことを言っている僕の考え方は簡単に世の中に受け入れられるものではありませんでした。だから、結果が出始めるまでは大変でしたね。
聞き手
結果を出してこられたのは、松尾さんと出会ってからですか?
及川
いいえ、自分で編み出したトレーニングで指導していた頃です。ただ、足りない部分は感じていました。トップレベルの選手は上達しても、一般のレベルの人々に効果が出ないようではトレーナーとしての質は低いと考えていたので、そこを打破するための方法を見つけないといけないなと思って色々なトレーナーの方と会って話をしてきました。でも、先ほども話した通り僕のトレーニング理論は従来の考えとは「真逆」。なかなか身体の使い方に対するフィーリングが合う人とは出会えませんでした。
聞き手
そんな中で出会ったのが松尾さんでした
及川
はい。話してみると、身体の使い方に関する考えが僕とマッチする部分があって、「ぜひ、この人のトレーニング理論を取り入れたい!」と思うようになりました。その結果、より多くの人のパフォーマンスアップに貢献できているし、満足してもらえていると思います。
聞き手
ちなみに、他にはどんな研究をされてきたのですか? 指導法を探すために海外にも出向かれたとお聞きしましたが
及川
オーストラリアでは半年ほど勉強しました。ただ、日本人と外国人では身体の使い方が違うので、そのまま海外のトレーニング方法を持ち込んでも厳しいと判断しました。日本でも理学療法士さんやフィジカル・アスレチックトレーナーさんと話を聞いたりしましたが、サーフィンに適したトレーニングが見つかることはありませんでした。
聞き手
日本人の選手と外国人の選手では、どのような違いがあるのでしょうか?
及川
言葉で表現するのは難しいですが、外国人は「押す」力が強いですね。それに対して日本人は「引く」ことに長けていると思います。
聞き手
それはフォームを見ることで気付かれたのですか?
及川
はい、プロの選手の動画を解析していくことで気づきました。表面的な部分ではなく、身体の内面がどうなっているのかを探ることでわかってきたことです。フォームでいえば、「手がどこにある、角度がどうなっている…」ではなく、「身体のどこの部分でどう使っているからこのフォームになっている」といった観点を大事にすることで見えてきたことです。
聞き手
なるほど。形から入るのではなく、身体の使い方を意識するという点が、松尾さんの考えと一致しているわけですね。
03. 僕が常に指導しなくても、自分で修正し能力を高めていけるようになってほしい
聞き手
及川さんがパワーライントレーニングの理論を習得することで、どんなことを目指していきたいですか?
及川
教え子である選手たちに、自分のコンディションの変化に気づく感覚を養いたいと思っています。選手の調子が崩れたときに指導し、矯正するのが今の僕の役割ですが、本来は選手自身が自分の異変に気づき、修正していくのが理想の形です。「あれ、おかしいな?」と感じたときに、どこが狂っているのかを察知し、元に戻していく能力を身に付けてほしい。「僕が指導している間は調子がいいしレベルも上がる。でも僕がいないとダメ」では、選手としてレベルアップできないですからね。
聞き手
及川さんがいなくても、選手自身でレベルアップしていけるのが理想だということですね
及川
そうです。ただ、サーフィンのようにフォームを大事にする競技でそれを実現するのは難しいとも思っています。身体の左右のバランスも知らず知らずのうちに崩れてきますし、使っている筋肉の緊張具合なんかも、フォームが狂う一因になります。上手な子たちは「こうすれば直る」という感覚をあらかじめ持っているので微修正はできるんですが、なぜ直るのかという点までは理解できていないので、本当にフォームがおかしくなってしまったときに直す方法がなくて苦しんでしまいます。
そんな時に、パワーライントレーニングで身体の使い方を感覚的に理解できれば、フォームが崩れても自分で修正できますし、逆にいい感覚は自分の身体に覚え込ませていくことができるので、どんどんパフォーマンスを上げていくことができると考えています。選手自身が自分の感覚を研ぎすませていく。それが一番重要なのではないでしょうか。
そんな時に、パワーライントレーニングで身体の使い方を感覚的に理解できれば、フォームが崩れても自分で修正できますし、逆にいい感覚は自分の身体に覚え込ませていくことができるので、どんどんパフォーマンスを上げていくことができると考えています。選手自身が自分の感覚を研ぎすませていく。それが一番重要なのではないでしょうか。
聞き手
及川さんはサーフィン日本代表の大村奈央選手も指導されていましたが、トップクラスのアスリートであっても指導方針や内容は変わらないのですか?
及川
そうですね、大きくは変わりませんね。大事なのは「基本」だと伝えています。トレーニングで身体の操り方を身に付けることに主眼を置いています。
聞き手
松尾さんからトレーニングを学んだことで、及川さんご自身に変化はありましたか?
及川
自信がつきましたね。自分が考えてやってきたことは間違いじゃなかったということが実感できたので。
04. パワーライントレーニングの本質を見てほしい
聞き手
改めて、及川さんは指導者としてどんな存在でありたいと思いますか?
及川
僕はサーフィンの指導者における「最後の砦」だと思っているんです。色々なスクールに行って、うまくなれなかった人たちが門を叩くケースが多い。トップクラスを目指す選手にせよ、レジャーとしてサーフィンと楽しみたい人にせよ、最初はみんなプロサーファーから教えてもらって、最終的に選手としては無名だった僕のところにやって来ます。そんなプロセスを経た子たちは相当な苦労をしているはずなので、僕の指導によって彼らが上手になってくれればうれしいですね。
聞き手
「他のどこに行っても効果がなかった人が来る」というのは、ウイニングボールと相通ずる部分があると思います。そんな及川さんから見た松尾さんのすごさ、パワーライントレーニングのすごさとは何だと思われますか?
及川
「どのスポーツにも通用すること」だと思います。これまで、サーフィンは浮遊状態で行うスポーツなので、普通のスポーツとは違うと言われてきました。でも、パワーライントレーニングの理論はサーフィンでも生かせる部分がたくさんあります。逆に、パワーラインの理論を学んだ僕が、他の競技の選手を教えることだってできると思います。大事なのは身体の使い方なので、動きを見れば問題点もわかるはずです。
筋肉をはじめ、身体の個々のポイントにフォーカスを当てた理論はたくさんありますが、常に身体全体のことを意識するのは難しい。それを実現させているパワーライントレーニングはすごいと思います。
筋肉をはじめ、身体の個々のポイントにフォーカスを当てた理論はたくさんありますが、常に身体全体のことを意識するのは難しい。それを実現させているパワーライントレーニングはすごいと思います。
聞き手
今後、ウイニングボールでは資格制度が整備され、パワーライントレーニングを学ぶ指導者の方も増えてくると思います。そんな方々に向けてひとことお願いできますでしょうか。
及川
まだ広く知られている理論ではないとは思いますけれど、中身は本当に濃いものです。一般的な考え方とはかけ離れたものであるために、「変わったトレーニングだ」という先入観から遠ざけてしまっている人がいたら、ぜひ内容を知ってほしいですね。少し触れればパワーライントレーニングの「本質」がわかるはず。そして「本質」は目に見えないところにある。色々な人が松尾さんと出会うことで、才能が開花すればすばらしいことだと思います。
聞き手
ありがとうございます。及川さんも指導者としてのさらなるご活躍を期待しております!